私は、よくない癖であまりお客さんの顔を見ないところがあった。

注意されて直してみても、気を抜くとすぐにまた目線は下へと向かってしまう。



その日は、あまりお客さんの来ない日なので、気楽だった。

なので、少し気が抜けたまま伏し目がちで居ると、私の視界には、大きな手と、ボトルのコーヒーと除菌ティッシュが入る。

「いらっしゃいませ」

だいぶん慣れてきた言葉を言いながら、バーコードを読み、ふと顔をあげた時。




私は思わず、絶句して相手の顔を凝視してしまった。