恋も推しごと〜私の推しがふってきました〜




「うん、知ってたよ」



 私を安心させるように、背中を撫でる手から怜也くんの温もりが伝わってくる。



「私ね……推しとしてじゃなくて、異性として怜也くんのことが好き……だから、怜也くんの一番の味方で、一番の推しでいてもいいかな?」


「そんなの決まってるでしょ」



 怜也くんはそう言って、一度私を離すと屈んで視線を合わせてきた。



「さとみさん、俺のものになって? 独り占めさせて?」



 私は顔が真っ赤になるのを感じながら、小さく頷く。

 その返事が今の私に精一杯できることだった。



「ねぇ、俺のものなら……いいよね?」



 そして、そんな私に更なる追い打ちをかけてきた怜也くんは、次の瞬間――、少し首を傾けて私の唇を優しく奪う。


 最高の推しが、私だけの(オフの時だけ)ものになった瞬間だった。



「もう、離してあげないから」


「ふっ……。それは俺のセリフだよ」



 どうやら、私の神様は私のことを手放すつもりは初めからないらしい。

 この推し活に、恋はなくてはならない存在になったのだった。


――Fin