恋も推しごと〜私の推しがふってきました〜



 そんなの、忘れるはずがない。あんな熱烈的な出会いを……。

 それよりも、どうして私がここにいることが分かったのだろう。

 もしこれが私じゃなかったらどうするつもりだったのだろうか。



「……忘れてないよ。――怜也くん……」


「ふふっ……さとみさん来てくれないかと思った」



 私を少し離した怜也くんは、グイッと顔を覗き込んでくる。



「あれ? 泣いた?」


「っ! 泣いてないっ……。それよりもどうして私がここにいるって分かったの?」



 私の強がりを、怜也くんはそっかと頭を撫でて流してくれる。


 本当なら離さなくてはいけないと分かっているのに、私の身体は離れることを拒んでいて、離れられなかった。



「5列目の真ん中……」



 ドンピシャで私のいた席を言い当てられて、ライブ中にまさか見つけたのかと思ってびっくりする。



「本当はもっと前の席にするつもりだったんだけど、さすがに取れなくてね……」


「えっ……?」


「ほらこれ、俺のアカウント」


「はっ……?」