私が一番楽しい生活をしていたのは、あの怜也くんと一緒に暮らしていた時だ。

 もちろん、会う前も楽しかったけれど、あの生活を知ってしまった後では物足りなく感じてしまう。



「相手は有名人だよ? 上手くいかなくて当然! だからさとみ、当たって砕けてこい」


「ふっ……砕けてって……」



 真っ直ぐな由羽に私は思わず笑ってしまった。

 たしかに、言っていることは正しい。たまたま会っただけ……、たまたま一緒に暮らしただけ……助けただけ……だから、この恋は上手くいかなくて当然なんだ。


 そう思うと少し気が楽になった。それと同時に私の背中も押された気がした。



「でも、由羽の言う通りだね。言わなきゃ伝わらないもんね」



 それは、自分が一番よくわかっているはずだった。

 推し活をするには、たくさんいるファンの1人になる。だから少しでも覚えてもらえるように、ひたすら自分の気持ちや、好きなところを手紙やSNSで伝えてきたのだ。