翼先生は授業とは別に命についての話しもしてくれた。

「人の命以外にも沢山この世は命で溢れてる。動物、植物、食べ物にだって」

「先生!俺んち犬飼ってるよ!」

「お!そうかちゃんと世話してるか?」

「うん!俺、夕方犬の散歩が当番なんだけどちゃんと行ってる!朝はお母さんかお父さんが当番なんだけど、最近はお父さん行かなくてずっとお母さんが行ってる!」

男の子Aくんが後ろの保護者に向かって笑いながら言ってクラスも笑いが起きた。

「おぉそうかそうか!ちゃんと夕方散歩に行って偉いなぁ!あとお父さんに話があるから、後で職員室に来るよう言っといてくれ」

翼先生のその言葉にAくんのお父さんはガタガタ震えてた。

翌日からちゃんと毎朝犬の散歩に行くようになったらしい。

「ちなみに食べ物も命があってご飯を食べる時はその命をいただくと言う意味も込めていただきますとちゃんと言ってな」

「「はーい」」

「ちなみに、お米はなんでこんな漢字か知ってるか?」

誰も手が上がらなかった。

「ちなみに保護者の方でわかる方いますか?」

「はいっ!」

お父さんBがビシッと右手を高々と上げた。

「じゃあどうぞ」

「はいっ!米の漢字を分解すると【八】と【十】と【八】になります!米を作るには八十八もの多くの手間がかかると言われてる事からこの漢字になりました!」

「おお!素晴らしい!みんな拍手」

翼先生の言葉にぱちぱちと拍手が起こりお父さんBは照れながらぺこぺこしていた。

「現代では機械化が進んで30ぐらいまで手間は減ったけど、それでもお米一粒作るのに沢山の手間と時間がかかっているんだ。だから食べ物を粗末にしない人になって欲しいと先生は思ってます」

「先生!ウチのお父さんそう言ってるけど、ご飯よく残すよ」

「そうか、それはいけないな。後で職員室に来るよう伝えておいてくれ」

後ろを振り返り見るとそのお父さんBは顔面蒼白でお母さんの肩を借りて立ってるのがやっとのように見えた。

ちなみにそのお父さんBは翌日からお米一粒残さず食べるようになったらしい。