「…!」
 氷雅(ひょうが)お兄ちゃんは私を右腕で抱き止めた。

「危ねぇ」
「ありす」
花果緒(かかお)駅着くまで、こうしててやるから寝てろ」

「うん、ありがとう……」

 私、ほんとにひどい妹だ。

 抱き締められたくなかったって思ったくせに、
 氷雅(ひょうが)お兄ちゃんのこと裏切ったくせに、

 高校で月沢(つきさわ)くんと会うのに、

 腕の中で眠るなんて。
 だけど、氷雅(ひょうが)お兄ちゃんの熱も体温さえも心地よくて安心してしまう。

 今はただ、こうして眠っていたい。