プシュー。
 その手を掴むことはなく、扉が閉まった。

 月沢(つきさわ)くん、まだ私のこと呼んで…。

 電車が動き出す。
 私は扉に両手を突く。

 月沢(つきさわ)くん!

 月沢(つきさわ)くんの姿が見えなくなった。

 突いた両手が震える。
 私は俯いて泣く。

 未だに信じられないよ。

 月沢(つきさわ)くんは暴走族有栖(ありす)の2代目総長で、
 氷雅(ひょうが)お兄ちゃんは暴走族黒雪(くろゆき)2代目総長で、

 私は月沢(つきさわ)くんの敵だなんて。

 それに……。

「…思い出しちゃった…ぜんぶ」

 保健室で見ていた夢は現実(りある)で、

 氷雅(ひょうが)お兄ちゃんが暴走族黒雪(くろゆき)に入ったのは自分のせいだって。