「行くぞ」
 7月9日の朝。氷雅(ひょうが)お兄ちゃんが玄関の扉を開けた。

 ――――俺も
 ――――星野(ほしの)が好きだ。
 ――――今から思い出させてやるよ。

 昨日の屋上での事を思い出し、ボッと顔が熱くなる。

 あれから結局、眠れる訳もなくて、
 深夜もベランダで月沢(つきさわ)くんと過ごした。

 だけど袋のままのサワー味のアイスキャンディー受け取ろうとしたら指が触れて落としちゃって……。

 慌てて拾ったけどドキドキして食べることも、
 月沢(つきさわ)くんと話すことすら出来なかった。

 こんなんで今日、大丈夫かな……。

「おい、ありす?」

「…うん」
 私はローファーのかかとを踏んだ状態で一歩前に進む。

 ぐらっ……。

「きゃっ…」