そして、ツンツンしようと手を伸ばした瞬間――。


「捕まえたっ」


ニヤリと口角を上げた千隼くんに、その腕を握られた。


「…千隼くん、気づいてたの!?」

「ああ。暴走族やってると、嫌でも相手の気配とかわかっちゃうんだよ」


そう言って手を持ち替えると、わたしの指に自分の指を絡ませながら優しく握った。


「もう離さねぇ」


その男らしい言葉にも、わたしの心は揺さぶられる。


「怒ってたんじゃないの…?」

「咲姫がくっつけにきてくれたから、機嫌治った」


はにかむ千隼くん。


みんなといるときは、いつもクールなのに――。

わたしだけに時々見せる甘い顔があるだなんて…、そんなのずるいよっ。


「俺の隣は、咲姫の特等席だから」



千隼くんとの距離――。

わずか、30センチ。