それは、窓際の一番後ろ――。

そう、千隼くんの席だ。


見ると、千隼くんの前の空席だった机とイスが、無残にも倒れている。


どうやら、千隼くんが蹴り倒したようだ。


「緒方くん、どうかしましたか?」


白富士先生の問いかけに、千隼くんはズボンのポケットに手を突っ込みながら、ゆっくりと立ち上がった。


「先生。…俺の隣、空いてます」


千隼くんは、隣の空席に視線を送る。


「あっ、そこも空いていたんですね。教えてくれてありがとう、緒方くん」


先生の言葉を聞くと、千隼くんはドカッとイスに座った。


「それじゃあ楡野さん、緒方くんの隣に座ってもらえますか?」

「は…はい!」


わたしは、そそくさと座席と座席の間をすり抜けると、千隼くんの隣の席へ向かった。


「千隼くん、隣だねっ。よろしくね」