「今日は、冷え込むみたいだね。千隼くんも、温かくして寝てね」


そう言って、千隼くんを送り出そうとした――そのとき。


「こんな状態の咲姫を置いて、平然として帰れるかよ」


背中に手をまわされたかと思ったら、わたしは千隼くんの腕の中にいた。

玄関の姿見には、わたしを抱きしめる千隼くんの姿が映っている。


千隼くんって、…温かい。


でも……。


「もう遅いし…、千隼くんは早く帰らないと」

「…なんで?」

「だって、『出かけるとき』にそばにいてくれる…っていう話だったでしょ?」

「うん、そうだよ」

「けど今は、家の中だし…」


千隼くんが帰ってしまうのは…心細い。

でも、明日出かけるときに、千隼くんに連絡すればまた会える。


だから、今日のこの一晩を1人で過ごせばいいだけ。