イケメン総長は、姫を一途に護りたい

とは思っていても、さっきまでの恐怖は、そう簡単に消え去るものでもなかった。



「じゃあな、咲姫」

「うん、おやすみ」


千隼くんが、わたしに背中を向ける。


途端に、不安の波が押し寄せてきて――。


「…待って」


気づいたらわたしは、ドアノブに手をかける千隼くんの服の裾をつかんでいた。


予想外のわたしの行動に、驚いた顔をして振り返る千隼くん。


「急にどうした…咲姫?」


その言葉に、ハッとして我に返る。


自分でも、なにをやっているんだろう。

今まさに帰ろうとする千隼くんを引き止めるだなんて…。


「…ご、ごめんっ。なんでもないの…!」


慌てて、千隼くんの服から手を離す。


千隼くんは、お父さんからの頼みでわたしの様子を見にきただけ。

そんな千隼くんを引き止めて、わたしったら…なにがしたかったんだろう。