イケメン総長は、姫を一途に護りたい

おそるおそる振り返り、なんとか声を絞り出す。


徐々に距離を詰めてくるのは、黒のパーカーの男。

被ったフードで目元は見えないけど、口元がニヤリと上がっているのだけは見て取れる。


右手は、パーカーのポケットに突っ込んだまま。


その手に、…なにを持っているの。

…まさかっ、ナイフ!?


あまりの恐怖で、大きな声を出すことも、この場から逃げ出すこともできない。


脚は震え、力が抜けてしまったわたしは、ドアを背にしてへたり込んでしまった。


「…咲姫ちゃん、…咲姫ちゃん、…咲姫ちゃんっ」


黒のパーカーの男が、わたしに手を伸ばした。

…そのとき!



「…てめぇ!咲姫になにするつもりだっ!?」


突然、男の背後から影が現れたと思ったら、一瞬にしてわたしの視界から男の姿が消えた。