…千隼くんの電話番号が書かれた紙。


こんなとき、千隼くんがそばにいてくれたらどんなに心強いことか。


でも、『出かけるとき』っていう約束だったし、心細いからってだけで呼び出したら迷惑だよね。


だから、千隼くんの番号に電話をかけることはなかった。



しかし、その日の夜。


最悪なことに、トイレットペーパーを切らしてしまったことに気づく。

ストックも、もうない。


これは、今すぐにでも買いに行かなければならない、最優先事項だ。


外に出るのも、もしあの黒のパーカーの人がいたらと思うと、なんだか憂鬱…。


一瞬、千隼くんの顔が頭に浮かぶ。


『出かけるときは、必ず俺に連絡して』


ああ言ってくれたけど、トイレットペーパーを買いに行くのも、すぐそこのスーパーだし…。


慧流座の総長である千隼くんを、トイレットペーパーの買い物に付き合わせるなんて…さすがに申し訳なさすぎる。