だから、てっきりそれが千隼くんだと思っていたけど…。


…じゃあ、あれは一体だれだったの…!?



〈…咲姫?どうした?大丈夫かっ?〉


急に言葉に詰まったわたしを変に思ったのか、お父さんが聞き返してくる。


…ここは、お父さんに相談すべきだろうか。


最近、だれかにあとをつけられている気がする…、と。


でも、そんなこと言ったら、絶対お父さんを不安にさせちゃう。

心配で、新しい職場で仕事に専念できなくなるかもしれない。


そうなってしまっては…困る。


だから、わたしは――。


〈ううんっ。なんでもないよ!〉


あえて平気なフリをしてみせた。


もし、目の前にお父さんがいたら、動揺しているのがバレたかもしれない。

でも電話の声だけなら、いつも通りのトーンで話せば、なんとかごまかせる。