川沿いの桜は、まだ満開ではなかったけど、それでも十分にきれいだった。


見上げながら、桜並木をゆっくりと歩く。


「そうだ!写真に撮って、お父さんに送ろうっ」


わたしは、アウターのポケットに入れていたスマホに手を伸ばすと、くるりと振り返り立ち止まった。


そのとき、目の端に入った…人影。


偶然だとは思うけど、わたしが振り返ったタイミングで、その人も立ち止まって背を向けた…。

…ような気がする。


黒のパーカーのフードを被っていたから、顔は見ることはできなかった。


不思議に思って見つめていたけど、その人は背中を向けたまま歩いていってしまった。


このときは、とくに気にすることはなかった。


…しかし。


黒のパーカーの人は、その後もわたしの行くところに姿を現すのだった。