イケメン総長は、姫を一途に護りたい

「…咲姫ーっ!!」


廃工場に、わたしを呼ぶ声がこだまする。


その声に、一瞬安堵する。

そこにいたのは、紛れもなく千隼くん。


しかしその反面、蛇覇の思い通りに罠にかかってしまったことに、不安の波が押し寄せる。


――だって。

廃工場の扉を蹴り飛ばしてやってきた千隼くんは、蛇覇のメンバーがうようよと溜まるこの場に、本当に1人で乗り込んできたのだから。



「思ったよりも早かったな。あいつ、どれだけお前にマジなんだよ」


ソウゴは腰掛けていたドラム缶から飛び降りると、指をポキポキと鳴らす。


「…蛇覇。てめぇら、こんなことしてただで済むと思うなよ」


眉間にシワを寄せ、怒り心頭の千隼くんがゆっくりと向かってくる。

あんなこわい顔つきの千隼くん…、今までで見たことがない。