ああ、知ってるよ。

――咲姫の気持ち。


俺に向いてないってことくらいな。



咲姫はここ数日、部屋にいないことが多かった。

「用事がある」と言って姿を消すが、…俺は知っていた。


二階堂の部屋に出入りしていることに。


初めは、パンフレットの撮影の打ち合わせで呼び出されているのかと思っていたが、それにしては頻繁に通っている。


それで、悟った。

咲姫が好きなのは二階堂で、2人はすでに“そういう関係”になっていたんだと。


そして、二階堂からの勝負を挑まれて確信した。


きっと咲姫は、俺よりも二階堂に守られることを望んでいる。

口には出さないだけで。



勝負のとき、二階堂がいつもと違うことはわかっていた。

動きだって鈍く、パンチやキックにも重みがない。


それに、決定的な足のふらつき。