だから俺はそうしたまでだっていうのに、やけにカオルが突っかかってくる。


「もういいだろ。終わったことなんだから」


今さら、未練がましく「もう一度勝負させてください」なんて言うつもりもない。


「カオル、いい加減落ち着けよ。俺だって普通の人間なんだから、負けるときくらいあ――」

「嘘つけっ。…お前、わざと負けただろ」


カオルが、俺の胸ぐらをつかむ。

いつも忠実なカオルが、初めて俺を睨みつけた。


「…えっ?総長が…わざと負けた?」


ほら、見ろ。

状況を理解できてねぇヒロトは、混乱してるじゃねぇか。


「なに言ってんだよ。俺は、真剣に勝負して――」

「だったら、二階堂の足がふらついたとき、なんでそこを狙わなかった?あんな隙、オレでも見逃さねぇよ」


俺の胸ぐらをつかむカオルの手が震えている。