砂まみれの体。

赤く腫れ上がった左頬。


こんな姿の千隼くん…、見たことがない。



「…千隼くん!!」


わたしは思わず、千隼くんに駆け寄った。

体が勝手に動いてしまった。


まさか、千隼くんが負けるとは思っていなくて、カオルくんとヒロトくんは呆然としている。


だって、この場にいるだれもが確信したはずだ。


二階堂さんがふらついたとき、勝負は千隼くんに決まったと。



千隼くんを抱き起こそうと、手を伸ばす。


…しかし、その手を払いのけられた。


「咲姫…、やめろ」


千隼くんの低い声が、わたしに重くのしかかる。

そして、その強い口調に、喉が詰まる。


「どうして…?」

「…お前はもう、二階堂のものだ。二階堂の許可なしに、俺に気安く近づくな」


そんなこと言ったって…、ついこの間までわたしのそばにいてくれたのに。