…だけど、わずかに千隼くんが押しているように見える。

素人のわたしでも、それはなんとなく感じ取っていた。


このままであれば、おそらく千隼くんが勝つであろう。


カオルくんやヒロトくん、亜麗朱の人たちの表情を見ていたら、そういう雰囲気が読み取れた。


そのとき…‼︎


二階堂さんの足元が、一瞬ふらついた。


…やっぱり、まだ体調が万全じゃなかったんだ!

それなのに、あんなに激しい動きをしたら、当然体にくるに決まっているっ…。


二階堂さんが作ってしまった…ほんのわずかな隙。


千隼くんが、それを見逃すわけがない。


きっと、二階堂さんも覚悟したはずだ。



――ところが。


瞬きをした次の瞬間には、千隼くんの頬に、二階堂さんのジャブが入っていた。



斜め後ろに倒れ込む、千隼くん。