「当たり前だろ。逃げる意味もねぇ」


睨みあう、千隼くんと二階堂さん。

わたしはただ、2人の真ん中で見守ることしかできなかった。


そして、ゆっくりと2人が前へ出てくる。


その距離、…わずか1メートル。


緊迫した空気が包み込む。


ごくりとつばを飲み込んだ――そのときっ。



両者共に素早い拳が、お互いの顔面目掛けて飛んでくる。

それを瞬時にかわす。


まるで息を合わせたかのように、戦いの火蓋は突然に切って落とされた。


パンチやキックの応酬に、一瞬たりとも目が離せない。


千隼くんは、今までに見たことがないくらい鋭い目をしていて…。

…わたしの知っている千隼くんじゃないみたい。



どちらも一歩も引かない、激しい攻防が続く。


決定的なダメージを与えることは今のところなく、力の差はほぼ互角。