「…咲姫だと?なんのために」

「キミは、楡野さんの用心棒をするように頼まれているそうだね」

「だったら、なんだ?」

「その役目、僕に譲ってほしい」

「…なんだと?」


一瞬にして、千隼くんの表情が変わった。

それに、場の空気もピリついて、殺伐とした雰囲気に変わる。


「僕が勝ったら、楡野さん――いや、『咲姫』は僕が責任を持って守るよ」

「なにを言い出すかと思えば…。そんなこと、やるだけ無駄だ」


どうやら、千隼くんはハナから二階堂さんの勝負を受け入れる気はなさそう。


わたしだって、千隼くんと二階堂さんが勝負だなんて…。

そんなの、いやだよ。


しかし、二階堂さんは食い下がる。


「逃げる気か、緒方?」


その言葉に、ピタリと立ち止まる千隼くん。


「あの慧流座の総長のくせに、こわいのか?僕に負けることが」