「咲姫に、なんか用?」


するとすぐに、敵意むき出しの千隼くんがわたしとの間に入り込む。


しばらく、千隼くんとその人が無言で睨み合っていた。

まるで火花が散りそうなくらい、お互いに視線を逸らさない。


「…千隼くん!そんなに睨むことないよ…!」


だって、まだわたし、この人になにもされていない。

それに、わたしの前にきたときは穏やかな表情だったから、危害を加えにきたとも思えない。


なのに、千隼くんはわたしを守る番犬かのように、隙あらばこの人に噛みつきそうな勢いだ。


するとその人は、千隼くんを見下ろしながらフッと口角を上げる。


「へ〜。噂は本当だったんだ」

「噂…?」

「慧流座の頭が、女に(ほう)けてるっていうのは」

「…なんだと?」


せっかく千隼くんをなだめようとしていたのに、その人はあえて挑発してきた。