千隼くんの厚い胸板を直視できないまま、目を逸らしながら開いたファスナーを上へと上げる。


すると、その手を千隼くんが握った。


「…もう遅い」


気づいたときには、わたしはベッドの上に押し倒されていて――。

見上げると、わたしに覆い被さる千隼くんが。


「俺の心臓がこんなに速いの、今に始まったことじゃないから」


千隼くんは、シャワー後のわたしの髪に指を通す。


「咲姫の濡れた髪、いつもと違うパジャマ姿見たら…。そりゃ、ドキドキもするだろ」


熱を帯びた、千隼くんの目。

どこか色っぽくて、目を逸らすことができない。


「そんな格好で、絶対にこの部屋から出ないで。他の男には見せたくねぇ。俺だったら、『誘ってんの?』って言いたくなる」


誘ってるだなんて…。

…そんなつもり、まったくなかったのに。