でも万が一、千隼くんが傷つくようなことがあっても――。

わたしは千隼くんに守られるだけで、なにもしてあげられない。


自分が無力なのが…悲しい。


今だって、こうして傷に触れることくらいしかできないのだから。



わたしが撫でるように傷に触れていると、ふと…あることに気がついた。


「あの…千隼くん。心臓がっ…」


傷のある左胸が、ドクンドクンと速く動いているのが指先から伝わってきた。


そんな千隼くんは、顔を赤らめながらこう言った。


「…そりゃ、心臓だって嫌でも速くなるよ。咲姫にこうして触れられたら…」


ハッとして、手を離す。


心臓の動きが速いから、てっきり体調でも悪いのかなと思って聞いていたけど――。

…それが、わたしのせいだったなんてっ。


「なんかっ…ほんとにごめんね」