でも、それが千隼くんの強さの根源で、ここまで慧流座が恐れられるようになった証。


きっとこれまでの総長も、そうして自らの体を張って慧流座を守ってきたことだろう。


だから、わたしが危ないからやめてほしいと思っても、千隼くんが歴代総長の意志を継ぐことは、当然のこと――。


「…でも、今はもう違う」


そうつぶやいた千隼くんが、まっすぐにわたしを見つめた。


「俺の一番は、咲姫だから。彼女に不安な思いはさせられねぇ」


千隼くんは、わたしの今にもこぼれそうな涙を親指で払う。


「もう無茶なんかしない。ヤバイって思ったら引き返す。笑われたっていい。それで咲姫が、こんな顔しなくて済むのなら」


千隼くんは、わたしの抱えている不安を取り除くかのように、優しく微笑んでくれた。



最強総長である千隼くんが、ちょっとやそっとのことじゃ負けないというのはわかっている。