20XX年元旦の日本。

~ラブの控え室~

トーイ・ラブ。
いつからこの地球《ほし》に現れたのかは、定かではない。

エンターテイメント会社、TERRA(テラ)コーポレーションの社長にして、世界的な大スター。

様々な慈善活動も先導し、国連や政界にも関与し、各国の首脳陣とも交友関係を持つ。


出番を待つラブの携帯が鳴った。

「HAPPY NEW 、サバ!」

「ラブ・・・久しぶりだな。実は・・・」

ボスニア在住の医師、サバ・ライカン 37歳。

国連の支援のもと、貧しい人々を助けていた。

その重たい声に、ラブの胸が一瞬固まった。
しばらく、何も言わずサバの話を聞く。

「そ…そんな❗️…まさか、どうして彼女が…」

(どうして・・・なぜなの?)

予想もしていなかった連絡に、自分を責めるラブ。


「分かりました。サバ、ありがとう。では、後ほど」

唇を噛み締め、携帯を切った。

いくつもの想いが、ラブの頭の中を駆け巡る。


「…ァァアーッ❗️」

「ガシャン❗️」

叫びと共に伸ばした拳に、壁の鏡が砕け散った。

「どうしてなの…ララ…」

頬を涙がつたう。



「大丈夫ですかぁ?そろそろお願いしま~す」

ノックの後、スタッフが出番を告げる。

目を閉じて、大きく深呼吸一つ。

噛み締めた唇に滲んだ血を、ティッシュで拭き、ゆっくりと席を立った。