「私の娘に触るな❗️」

ラブは、この時の母親の目を、それから幾度も夢に見た。

「…あんたがいなきゃ、この子は死なずにすんだ。あんたのせいで、この子は死んだのよ!人殺し!娘を返して❗️私の娘を返して…」

美樹を抱き締めたまま、母親は前のめりに泣き崩れた。

その叫びにメイが現実に戻った。

「私のせいなの…美樹は私の代わりに撃たれて…。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい…」

メイはひたすら謝り続けた。

ラブは、もう何も言えず、何もできなかった。
ただ唇を噛み締めて、必死に涙をこらえていた。

(本当に悲しいのは母親であって、私じゃない。私のせいで美樹は死んだ。私には悲しむ権利なんかない…)


~1時間後~

警察の現場検証は早めに切り上げられ、全乗客のチェックとケアに力が注がれた。

美樹の遺体は、救急車で母親と共に一旦病院へ搬送された。

休憩室に、ラブ、メイ、鷲崎、鬼島の四人がいた。

「ラブ…大丈夫か。私には何を言って君を慰めればいいか分からない。しかし、これだけは言っておくよ。君は間違っていない。君がいなければ、世界はもっと大変なことになっているはずだ。君は大勢の人を助けているんだよ」

「……」

無言で深く礼をしたラブに、心配そうな目をしたまま、鷲崎は部屋を出て行った。

暫くの沈黙の末。

「な…なんか温かいものでも…」

ラブがつぶやき、目の前の自販機を見つめる。

「くっそー❗️」

メイが叫んだ。

「ガシャーンッ❗️」

その叫びとほぼ同時に、ラブの拳が自販機のショーケースを砕いていた。

メイも驚いて見る。
慌てて鬼島が、ラブの手を掴んで引き出す。

「バカヤロウ!無茶すんじゃねぇ」

ラブの手に刺さったガラスを丁寧に取り除く。

「全く…血まみれじゃねぇか」

「…そうよ…。私の手は死んで逝った人達の血で、いつも血まみれなの…。私の大切な人達は、みんな私のせいで死んでしまうの…。メイ、組長…あなた達も、もう私なんかに近づかない方がいいよ…死んじゃうよ…」

「ラブ…何を言うの❗️」

「だって…そうじゃない❗️」

「バシッ!」

鬼島の手が、ラブの頬を叩いた。