~成田空港~

警察や救護班が見守る中、タラップが飛行機に繋げられ、ドアが開いた。

乗客達が、我れ先にと出て来て、救護班を押し返す。

「もう大丈夫ですから、皆さん落ち着いて。救護班を通して下さい!怪我人を…」

警察が、メガホンで必死に抑え様とするが、ムダであった。

犯人の一人が乗務員であったことから、乗客の不信感は止められなかった。

事実、犯人の仲間が残っていない確証もないのである。

「お願い!中へ通して!みんな止まって」

ラブの声が無情に響く。

「ラブ!こっちだ」

「T2!来てくれたの!」

恐らく、無断で借用した移動式のタラップを運転して、T2が現れた。

貨物室の下へ着くと、タラップを上げ、登っていく。

「開けて!」

「フンッ!」

T2が、外部の取っ手をひきちぎる。
そしてその窪みへ手をかけた。

T2の体には、無数のパワーチップが埋め込まれており、強大な力を発揮できる。

「うりゃ~❗️」

「バキッバキッ!」

渾身の力で貨物室のハッチをこじ開けた。

T2の肩を踏み台に、すかさずラブが中へ飛び込む。

キッチンへ繋がる貨物エレベーターに乗り、機内へと入った。

扉が開いた瞬間、ラブの耳に、激しく泣き叫ぶ声が響く。

「メイ!」

少女を抱き締め、泣き叫ぶ母親の側に、メイが呆然と座り込んでいた。

鷲崎がラブに首を振る。

「…ラ…ラブ…?ラブ!早く!早く美樹を助けて!美樹が…美樹が死んじゃう!」

メイは、ショックで混乱していた。

母親の白い服は、血で真っ赤であり、座りこんだ床にも血溜りができている。

遠目にも、少女がもう生きていないことは分かった。

「そ、そんな…」

つぶやいたラブが母親に近づく。

「お母さん、診せてください」

それでも、美樹の容体を確かめ様としたラブの手を、母親が激しく振り払った。

「触らないで❗️」

ラブは、心臓が止まるほどの衝撃に打ちのめされた。