冬の嵐は、やっと収束を見せていた。

空母内にある一室に、ヴェロニカ、ロビン、アボット、そしてラブがいた。

「ヴェロニカ、昨日研究所を訪れたこの男を知ってる?」

アイからのデータが、モニターに映し出された。

「さぁ・・・見たことございません。研究所のメンバーであれば全員知ってますから、外部の方ですわ。昨日と言えば、世界エネルギー開発事業団の、視察巡回がありました。きっとそのメンバーですわ。この方がどうかしましたか?」

相変わらずの丁寧なお言葉である。

アラスカの話は極秘事項であり、話すわけにはいかない。

「何らかの理由で、今回の事故に関与しているかも知れないの」

「えっ!あの中に犯人さんがいらしたの?」

「さん」付けた上に、「いらした」とは・・・。

まぁ、ラルフ長官の娘であれば・・・と納得するラブであった。

「でも、お気の毒に。もう海の底ですわ。嵐で足止めされて、施設内に留まっておりましたし、救助された中にはおりません。それとも自爆テロでしょうか?」

突然、モニターにアイ(疑体)が現れた。

「ラブ、二人目がいました。ハワイ沖の施設に、世界エネルギー開発事業団の視察巡回として、今日入っています」

「あら、恐ろしいことですわ。他の13の施設は、大丈夫なのでしょうか?」

(…⁉️)

「ヴェロニカ!同じ研究所が、あと13箇所あるの?・・・全部で15箇所」

アイが、モニターに映し出した世界地図で、説明を始める。

「イギリス、ドイツ、オーストラリア、中国・・・。全部で15箇所あります。全て地中のマントルが持つエネルギー、火星から持ち帰った鉱石を加え、莫大なエネルギーに変える研究をしています。ラブ。どうやら見えてきましたね」

そこへ、T2の声が割り込んできた。

「ラブ、例の監視惑星の奴らの記録を辿ったが、影すら見あたらねぇ。幽霊みたいだよ全く。それにしても、普通の庶民であった人間が、自分の意思でテロ活動を?しかも、ほとんど存在も知らない施設へ潜り込み、的確に急所を破壊するなんて、どう考えても不可能だ。操るにしても、「奴ら」は数百年前に滅びてるし、それに例の「もの」は無人だったんだろ。どういうこったこりゃ?」