着水した瞬間、命までも凍らせる程の寒さがラブの体を襲った。

(確かに、早くしないとヤバイわね。)

ラブは、遠くから幾つものヘリのライトが照らす中、大きく息を吸い、海中へと一気に潜った。

水深約5メートルの辺りに筏はあり、切れたケーブルは何とか見つけられた。

しかし、彼女は、既に指先はおろか、体中の感覚を失いつつあった。

そこで、小さな窓からラブを見ていたヴェロニカは、驚く光景を目撃したのである。

胸の前で手を合わせ、目を閉じたラブ。

すると、両の手首と額に、光の点が生まれたのである。

次第に光が増し、手首の光が彼女の手を包み込んだ。

一度、両方の掌を閉じて開き、彼女は作業に取り掛かった。

三分後、作業完了。
予定では信号弾を打ち上げるはずであった。

しかし、その時、ラブのからだは限界を超えていたのである。

遠のく意識の中で、ラブは念じた。



ロビンは、ステルスと共に、懸命に風と戦っていた。

その時、ラブの声が頭の中に聞こえた。

(今よ、ロビン)

ためらっている間はなかった。

ケーブルの電源を入れるロビン。


救命筏のハッチがゆっくり開き始める。

と同時に、今までで最も強い風が、ステルスを襲った。

幾つかの羽がちぎれ飛び、バランスを失ったステルスには、もうそこに留まる力はなく、海上へと落下していった。

ハッチが自動で開き、ロビンは海へと脱出。

「うへっ!寒すぎる!あっ!・・・や、ヤバイ!」

ステルスがゆっくり沈み始めていた。

本来、作業終了後は、体にくくり付けたケーブルで、ラブを吊り上げる予定であった。

従って、ケーブルはまだラブと繋がったままである。

「ラブ⁉️」

呼ばれた気がして、ラブは我に返った。

と同時に、腰に繋がったケーブルが引っ張られた。

ゆっくりと、さらに深海へと引きずり込まれていく。

息も限界を越えている。
どうすることも出来なかった。

(もう、だめか・・・)

そう思った時、腕を誰かが掴んだ。

(ロビン!)

ロビンは、腰から伸びるケーブルに銃口を当て、引き金を引いた。

ケーブルは切れ、ステルスは海中施設と連れそう様に、海の奥深くへ沈んで行った。