~空母ライオネル~

現場から約30キロの位置。

ライオネルは、空母エンタープライズの5倍の大きさを持つ、海の要塞であった。

そうでなければ、この嵐の中、留まることは不可能である。

強風が、ステルスの機体を容赦なく叩きつけていた。

風は、まだ何とかできたが、厄介なのは、雪であった。

視界ゼロの中、ロビンはモニターと、空母からの信号を頼りに、降下していった。

「ロビンちゃん。頼むわよ。救助に来たスーパースター墜落!なんて見出しは見たくないからね~」

悪戦苦闘の末、何とか着陸できた。

ステルスの機体が、空母の中へと吸い込まれて行く。


「おぉ~ラブちゃん。相変わらず可愛いねぇ。そんな薄着で寒くないかね?」

おじいちゃんが、真っ白な脚を眺めての第一声。

正直、ショートパンツで来るべき場所ではなかったが、成り行きで、そんなことをかまっている状況ではなかった。

「隊長、自衛隊からの連絡は?」

「たった今、5名を救助したとのことじゃ。その他にも大勢が、バラバラに漂っており、既に我が軍も向かっておる。他に、8名を載せた救命筏(いかだ)が、海から突き出た施設の塔に引っかかり、離脱不能となっておる。塔が邪魔して、ヘリが近づけないのじゃ」

「マズイわね。海底の施設の映像は見える?」

隊長の合図で、モニターに映像が映し出された。

「無人探査艇の映像じゃ。酷い状況じゃな。分析したところ、このメイン動力部が、内部から爆発した様じゃ。このままでは、いずれこの海底の割れ目に引き込まれるぞ」

それは、筏も道連れということになる。

「なぜ、彼らは筏から出て、そこを離れないの?」

「これを見ろ、筏は天地逆の状態で、既に海中じゃ。ハッチは海の中、外部にあるケーブルが切れて、手動で開けるしかないのじゃが、水圧で外へ開くことができんのじゃ」

「彼らと交信はできる?」

マイクが、ラブに渡された。

「聞こえる?みんな無事?そこを出る方法はありませんか?」

「はい。聞こえております。ここにいる8人は、皆無事です。いろいろ試しては頂いたのですけれども、無理なようでございます。このハッチを、どうにかして開けないと・・・」

この絶体絶命の時に、似つかわしくない丁寧な言葉であった。

「わかったわ、絶対に助けるからね。諦めちゃだめよ!」

(ヘリじゃ・・・ムリか・・・)

ラブが、ロビンの顔を見て微笑んだ。