車の中のモニターでその状況に歯を噛み締めていたラブ。

そこへ、ロシアの官房長官ラルフ・ヴェノコフから電話が入った。

「ラブさん、研究所が大変な状況になってしまいました。嵐を想定すると、救助には大型のヘリが多数必要となります。先ほど緊急脱出装置の作動を確認致しました。たとえ、脱出したとしても、荒れた海です。救命筏が持ちこたえられるかどうか・・・。感知圏外へ流された場合、発見できる可能性は極めて低いと思われます。一刻も早く救助が必要ですが、我が国の軍は間に合わないのです。・・・実は私の娘のヴェロニカも研究員として、そこに・・・。助けてください」

ラブはある事情で、ラルフの家に厄介になったことがあった。

民主的で、優しく、決して偉ぶらない彼を、ラブは信頼していた。

「ラルフ長官、お久しぶり。落ち着いて・・・ますね。この前はご馳走様でした。奥様は元気ですか?また今度お邪魔しますね~。とりあえずは、できる限りのことはやってみます。長官の頼みじゃ断れないし!後は私に任せてください」

冷静に明るく応えてはいるが、その目は真剣そのものであり、深刻さを物語っていた。

電話を切ると、目を閉じて暫く考え込んだ後、アイに指示を出した。

「アイ、世界中に目を見張ってて。些細な異変も全て私に伝えて」

そして、彼女は一本の電話を掛けた。


「ラブです。折り入って、あなたにお願いがあります・・・」