「危険だと止めたけど、私も実はHEAVENを追っているの。最後は彼に負けました。子供達に会った後で、私は彼を連れて支援金を届けたの。あなたが調べた補佐官以外は、見たことのないメンバーでした」

ラブはここで少し間をとり、ワインを口にした。


「山本さん。彼を殺したのは私です」

山本の顔が一瞬硬直した。

しかし、ラブの悲しみに満ちた瞳を見た時、その悲しみの意味が理解できた。

山本とて、伊達《だて》にこの業界で生きて来た分けではない。

その人物の目を見れば、真実か否かの見当はつく。


「ラブさん。奥田は戦闘に巻き込まれたと聞いています」

「いいえ。それは事実ではありません。その会合の後、私は一度彼と同じホテルへ戻り、次の朝、出発する予定でした。しかし、子供達の学校からサンタ役を頼まれ、彼とは別の車で、学校へ行きました。その夜中に、ホテルが砲撃され、学校にいた私は助かりましたが、彼は・・・」

悔しさを噛み締めるラブ。

その真実に、山本も唇を噛み締めた。

「確かに、政府の発表は、同じホテルに泊まっていた国防省幹部を狙った、反抗勢力の攻撃だとされました。私は、その発表を疑って、亡くなられた幹部の奥さんに話を聞いたの。すると、その夜彼から電話で、「お前は何も心配しなくて良い」と意味深な連絡があったということでした。恐らくは、政府の命令で犠牲になったのだと思います。それ以上の事実をつかむことは、残念ながらできませんでした。私もその後、数回狙われましたが、こうしてまだ生きています」