スタジオ内に緊張が走る。

心配していた事態が現実となり、局員全員が息を呑んだ。

ラブは一瞬「仕方ない」といった残念そうな表情を見せたが、直ぐに笑顔になって告白した。


「こういうことを自分の口から話すのはイヤなのですが…。確かに私の利益は莫大なものだと思います。その20%は我が社の発展に向けてます。後は…そのほぼ全額を寄付しています。世界中には自分達ではどうすることも出来ず、助けが必要な人や国がたくさんあります。今日死んでしまう子供達の命が、お金なんかで助かるなら、私は全財産を投げ出してもいい。偽善と言うなら言えばいい。他には、夢に向かって頑張っている人達の支援や、企業の医療・技術開発、環境改善団体、宇宙開発、その他様々なものに費やしています。これが全てです。こんなことをPRしたくは無かったのですが…、返って混乱させてしまった様でごめんなさい。平和に逆らう様なことは、一切決してしていません。人はみんな、温かな愛情と、眩しいくらいの希望を持っています。私は人の心が好きです。この地球《ほし》が好きです。その為なら命を賭けて守りたいと思います。山本さん、信じて貰えますか?」

ある程度の予測はしていたが、予想以上の内容に加え、この細い体の全身から伝わってくる真実のオーラと、自分を真っ直ぐ見つめる澄んだ瞳に、山本は打ちのめされていた。


「し、しかし、ラブさんご自身の収入は?」


ラブは、山本の目に「信頼と安心」を感じ取り、優しい笑みを浮かべて答えた。

「私って忙しいからね〜。家があっても帰れないし、身に着けるものは、次から次へとスポンサーさんたちが運んでくるし…。食べたり飲みに行っても、何故だかみんな「Welcome」で、ご馳走してくれるの。だからお金なんて要らないの。使ってる暇なんてないし。素敵な彼でも出来たら別だけどね~。ないない!ほらね、持っててもムダでしょ」

山本は、これが「ラブ」なんだと改めて納得した。

恐らく今夜の事で、自分は局を追われるかも知れないが、後悔は無かった。