小さなホールに怪しい音楽が流れ、ショウが始まった。

一流の特殊メイクをした赤鬼(メイ)が現れると、子供達は真剣に逃げ回った。

…少しリアル過ぎたかもしれないと、後でメイは反省した。

先生達が立ち向かったが、歯がたたない。

そこへ、まるでキューティハニーの様なコスプレのラブが現れた。

…少しセクシー過ぎたと、後でラブは反省した。

子供達は、本物のラブに会えるとは夢にも思っていなかった。


「ラブ!!ラブだ~。わぁ~ラブ」

子供達のテンションは急上昇!全員がラブに殺到していく。

「よ~し、みんな!この豆で鬼を追い払っちゃおう!」

実は、鬼(メイ)の存在は、子供達の脳裏からすっかり消えていたが、ラブの声で思い出した。

子供達は、最強の味方(ラブ)が現れたことで、元気百倍!渾身の力を込めて、豆を投げつけた。

「痛っ!おいこら!痛いって!こらガキ!ラブ!あんたまで!」

子供達の大勝利であった。


節分イベントが終わってからも、暫くラブは子供達と話をしたり、遊んだりして過ごした。

最後には、感謝を込めて、子供達が、いつも歌っているラブの歌『独りじゃない』を歌ってくれた。

この歌は、親のいない子供達を勇気付けるために、ラブが作った歌であった。

ラブには、笑顔で力いっぱい歌う子供達が、すごく誇らしく思えた。

流れ落ちる涙を拭いもせず、微笑みを浮かべて、その勇姿を目に焼き付けていた。

ふと見ると、隣の赤鬼も泣いていた。


歌い終わった子供達が、自信に満ち溢れた笑顔でラブをつめている。

「みんな、今日はありがとう。ラブは、みんなに勇気をもらったよ。助け合って、強く、真っ直ぐに生きるんだよ。そして、どうしても困った時は、「ラブ・コール」して!世界の何処にいても、ぶっ飛んで来るから!大好きだよ。みんな」

子供達の間を、ラブはゆっくり、一人一人の目を確かめながら出ていく。

メイが後に続く。

すると一人の女の子がその手を掴んだ。

「私は美樹。赤鬼のお姉さん。痛くしてごめんなさい。ガマンしてくれてありがとう。来てくれてありがとう」

メイも、実は孤児であった。
だからここの子供達の寂しさは、良く分かっている。

止まりかけていた涙が、また溢れて来た。
美樹と名乗った女の子を、思い切り抱き締めた。

それへ、他の子供達も押し寄せてくる。

その光景を見届け、ラブは車に乗り込んだ。


(関連小説:『ネコの涙』より)