~東京都港区~

孤児院の裏門に、ラブの車が止まった。

「ラブ、着きました。大丈夫ですか?」

彼女がボーっとすることは珍しい。

アイには、ラブが今朝からずっと、遥か彼方の銀河に、想いをはせている事が分かっていた。

「ありがと。これから子供達に会うのに、こんなんじゃダメね!先月は一箇所も行けなかったから、今月は頑張らなきゃ」

ラブは、世界中の養護施設や、孤児院を毎月2~3箇所回り、子供達と触れ合ったり、問題や要望を聞き、それに応対していた。

先月は、ボスニア帰りに狙われた事が尾を引き、そうでなくても、正月明けはテレビやイベントに引っ張りダコだったのである。

今日はメイの企画による、節分イベントであった。

ラブは、子供達に見つからない様に、裏口から入った。

メイは少し前に着いて、打ち合わせや準備をしながら、職員室にいた。

「ラブ、遅いじゃん!…つぅか、何で私が赤鬼なのよ❗️」

全身赤い服に特殊メイク。
頭に黄色い角を生やしたメイと思われる者が、正真正銘、真っ赤になって喚いていた。

「あら、その調子その調子。なかなか様になってるわね。だってね、子供達のスーパーアイドルが、まさか鬼じゃマズイでしょ。豆を投げつけられないでしょ?」

確かに、自分かラブか?の2択の場合、仕方ないとはメイも思っていた。

言い出しっぺとして、観念するしかない。

もっとも、メイが席を外した時に、企画委員たちが、

TERRA(うち)で一番鬼にふさわしいのは、メイだよなぁ。ラブをあんなに働かせるのは鬼だ!あれは仕事の鬼だ」

と満場一致で可決されたのであった。