音を忍ばせて、とりあえず入り口の方へ逃げた。


(ん?・・・メイってあんな声だったかな?)

もし赤倉に悪意があれば、ラブはすぐに察知したはずだが、全くの無警戒であった。


壁の電話で975を押す前に、メイの方からコールしてきた。

「ごっめ~ん。忘れてた。ラブが寝てるわ」

既にそれはご存知であった。

「は、はい。拝見・・・あ、いや、その・・・確、確認しました」

「そう、それなら話は早いわね。いつものことなのよ。彼女忙しいからね、今朝も7時までかかっちゃって、自分のベッドへ帰る暇ないから、そうやってセットで良く寝るのよ」

「そうなんですか・・・でもこんなとこで、なんで裸なんですか?危ないじゃないですか💦」

「あら、もう《《確認》》したのね。短時間で熟睡するためには、自然体のままがいいんですって。だから、車で寝る時も、一人の時は裸なのよ彼女。危険?アハハ。襲えるものなら襲ってごらんなさい。彼女無敵の「聖拳」伝承者よ。それに、「こんなとこ」でも、ここは彼女のビル…って言うか「家」だからね」


そうだった。

前に番組で、K1の大男3人を一撃で伸したのを見たことがあった。

ヤラセにしては動きが熟練していたのを覚えている。

「悪いけど、テレビの前のバッグに着替えあるから、渡しといてくれる。寝起きも悪くないから心配しないでいいよ。では、よろしく!」


赤倉が振り向くと、全裸のラブが立ち上がって伸びをしていた。


「ごめんなさいね。《《こんなとこ》》で寝てて。メイかと思った。新人の赤倉さんね。着替え知らない?」

薄暗い照明の中ではあったが、彼女の美しさは十分わかった。

「す、すいません💦知らなかったもので。だ、誰にも言いませんから」

「こっちが悪いんだから気にしないで」

ラブの笑顔に、赤倉は血が吹き出そうなくらい赤面した。

「大丈夫、みんな知ってるよ。前なんか、マネキンと間違えられてね。小道具さんが片付けようとして、『おはよ』って言ったら腰抜かされちゃったし」

赤倉の目線で、着替えのありかに気付いたラブは、身に着けながら、ついでに設備の説明をした。

…が、思考停止中の彼にはムダであった💧


「ヨシ!完成。あらら、こんな時間だわ。ありがとね赤倉さん。おかげで遅刻しないですんだよ。頑張ってね~」

そう言って、赤倉の赤い頬に軽くキスをして、彼女は出て行った。