レストランにはサバが先に着いており、席から手を振っている。

ララ達には、日本から寄付で持って来た服を着せていた。

服ぐらい買ってあげるのは造作ない。

が、優しい人達の気持ちのこもった贈り物を、ラブは優先したのである。

「おっ、素敵なご一行様いらっしゃい。ここのシェフとは親しいので、任せてあるよ。僕は選ぶのが嫌いでね」

ララの緊張は、ひきつった笑顔で簡単に分かった。

それでも弟達が粗相をしないか、気にしている様子である。

次々と運ばれてくる料理は、見たこともないものばかりであったが、弟達にとってはどうでも良かった。

いつもは空腹を半分も満たせないことであろう。

彼等には質より量である。

途中から、ララの皿が片付かないことを、ラブは気になっていた。

「ララ、具合でも悪いの?遠慮はしなくていいんだよ。このカニみたいなヤツ、なかなかよ!」

実はラブにも、何の料理かは良く分かって無かった。


「ねぇ、ラブ。…この料理持って帰っちゃダメ?お兄ちゃんにも食べさせてあげたいの。今まで私たちのために、食べないで働いてくれてたお兄ちゃんに…」

ラブの予想通りであった。
病気の兄を忘れて、ご馳走にはしゃぐことなんか、優しいララに出来るはずがない。


「サバ、シェフを呼んで来て」

ラブを知っているサバは、何も聞かずに席を立ち、暫くしてシェフを連れて戻って来た。


「ララ、今夜はホテルで一緒に眠って、明日はお兄ちゃんのとこへみんなで行こう。ショップには、私が連絡しておくから」


ショップへは、すでに連絡済みであった。

後ろめたいオーナーが、国連に関与するラブに逆らうことは無かった。


「ほんとに!やった~!。入院してから一度も会いに行ってないの」

「では一つお聞きしますが…お兄さまの病院には、何人くらいの友だちがいらっしゃるのかな?ララ様」

わざとかしこまったラブに、ララは笑いをこらえながら、

「たぶんね~、二十人くらいでございます」

と、負けずにかしこまって答えた。

うなづくサバを確かめ、シェフに顔を向ける。

「24人分のランチをお願い。明日の朝10時に取りに来るわ」


この店が、午後からなのは知っていた。

そして、サバの友人である彼が、この想いを断るはずがないことも、分かっていたのである。

「確かに承りました。ありがとうございます」


その夜、ララはラブの胸で幸せに眠った。