ヴェロニカも、オーシャン・ビューでの父親とのディナーを楽しみにしていた。

しかし、テラで、あれ以上会話を続けることはできなかった。

お台場を離れ、タクシーで都心へ向かう。

「パパ、リクエストはございますか?」

「ああ、GINZA(ぎんざ)の夜を体験してみたいものだが・・・お前を連れてはマズイかな」

「かまいませんわよ。ママに写真を送らせてもらいますけどね」

「おい、それだけは許しておくれ。まだやり残したことがあるんでね」

ラルフの胸で携帯が鳴る。

(この曲・・・やっぱり・・・)

ラブの曲『PEACE OF EARTH』のサビであった。


「君か・・・丁度良かった。今娘に、東京のどこへ行きたいか尋問されていたところだ」

「・・・尋問って⁉️」

無言でヴェロニカが抗議する。

「・・・分かった。そうするよ」

携帯を切る。

「もう!お決まりになりましたか?」

「横浜は遠いのか?」

「横浜ね・・・。イイところがありますわ。運転手さん。お願いいたします」

タクシーは、一路横浜へと進路を変えた。




首都高速から、新しくできたシーサイドハイウェイに移る。

海の上を走る真っ直ぐなハイウェイである。

「素敵。この道は始めてですわ」

ヴェロニカが遠くの海を見つめた時。
闇の海上に、ポツンと光が生まれた。

次の瞬間。

「ズドドーンッ💥💥」

前方のハイウェイに火柱が上がった。

「キキキキーッ!」

急ブレーキで停止する車たち。

何台かが海へ転落し、路上ではひどい衝突事故が発生していた。

「いったい何でございますか?」

車を降りるヴェロニカ。

前方約300メートルの道路が完全に破壊されていた。

悲鳴と罵声、炎上する車。
最悪の状態であった。

(…んっ?)

空気を切る音が近づいたと思った時、下方の海から真っ黒なヘリが浮かび上がってきた。

「伏せろ❗️」

ラルフが叫ぶと同時に、ヘリの機銃が掃射される。

「ズガガガガガガガ❗️」

逃げ惑う人々が、次々に餌食となり、数台の車が爆発、炎上する。

近くにいたアベックの車が爆発し、その勢いでラルフが軽く吹き飛んだ。

「パパ⁉️」

叫んだヴェロニカの周りを、黒い人影が囲んだ。

「何ですか、あなたたちは⁉️あっ・・・」

背後からスタンガンを当てられ、ヴェロニカは気を失った。

数人が、降下してきたヘリへと彼女を運び込む。

僅か数分で、ヘリは、夜の闇へと消えて行った。