ラブは、あらゆる要求に耐えた。

しかし、その存在理由や過去の秘密について、語ることはなかった。

それは、銀河の掟であり、いつか訪れる地球の最期まで、決して知られてはいけないことなのである。


各国の首脳陣から角界の権力者たちまで、あらゆる人々が、彼女の解放を要求した。


もし彼女が開放を望めば、恐らくそれを拒む者は誰もいないはずであった。

しかしラブはそうはせず、科学者たちに、運命を委ねたのである。


連日連夜、世界中が、彼女の解放を願う祈りに満たされていた。




~ロシア~

「将軍、準備ができました」

「よし、始めろ」

実験室に置かれたベッドに、マイク・レイズが横たわっていた。

「頭脳の記憶回路をモニター化します」

大きなモニターに次第に画像が見え始める。


ラブとの闘いの場面が、マイクの目線で映し出された。

ラブの姿が一瞬消える、そして、背後に回ったラブを、その視界が捕らえた。

「ここだ!」

ラブの額に光の点が生まれる。

そしてそれは、一つの図形へと変化していった。

「これは・・・。ミゲル、この図形をヴァロンへ送れ!」

その図形は、世界各地の主要な遺跡に見られ、『王家の紋章』と呼ばれるものであった。

「あいつが何者かは知らんが、鍵を握っていることと、邪魔であることに間違いはないな」

マイクは、HEAVENが作りあげた、ヒューマノイドであった。

「こいつの記憶から、ラブのデータ分析を急げ。博士からの遺跡の分析結果はまだか?」

「はい。失敗は許されませんので、慎重に進めてはいますが・・・」

「やはり、彼では限界の様だな。ミゲル、次のプランへ移れ」

「かしこまりました」


世界が困惑している裏側で、ヘブンの企みは、着々と進みつつあった。