~1年前のボスニア~

ラブは、PEACEが開設している、小さな医療施設を訪れていた。


「久しぶり~サバ。元気そうで良かった。ご要望の薬や器具を持って来たよ」

サバ・ライカンは、ここの責任者である。

10年前、医者である妻と共にこの地に来た。

しかし、5年前の紛争の際、政府軍が乱射した銃弾により、妻を無くしていたのであった。


「ラブ、相変わらず美しいな。君が来ると、ここがボスニアってことが信じられなくなるよ。子供たちもお待ちかねだよ」

ラブは、この近辺だけでも五つの学校を開いていた。

罪深い大人なんかに影響されず、子供達には明るく素直に育って欲しい。

それが彼女の願いである。


「サバ、ララもちゃんと勉強してる?」

「それが、ひと月前から来なくなったんだよ」

ララは11歳の明るい女の子。
四人兄弟の二番目である。

両親は反抗勢力に加担し、ララが7歳の時に死亡。

1番上の兄が働いて何とか生き抜いていた。

その兄が、病気で働けなくなり、代わりにララが働きに出ているのだという。

この地では、親を失った子供や、働く子供は普通のことである。



ララとの出会いは、一通のメールから。

ラブの作った学校には、子供達の為に、パソコンが設置してあり、ラブの直アドもオープンで設けられていた。


「ラブさま、わたしララ。クリスマスはみんなでかみさまにお礼をしたいの。だからおねがいします。きてください」


サバのコメントもあった。

学校の先生が、
「クリスマスは、みんなで神様に感謝しましょう」

と言ったところ、ララは、
「ここに神様なんていないよ。神様なんて一度も助けてくれなかったし。私たちを助けてくれたのはラブ。だからあの人に会って、ありがとうって言いたい」

と言った。

もちろんラブは、このリクエストに応えた。
クリスマスに子供達がくれた、手作りの首飾り。

嬉し涙のラブに、
「泣かないで、ラブ。笑って!」

そう言って、ラブの涙にキスをしたのが、ララであった。