~黒龍会~

郊外とは言え、東京にまだこんな緑が?と思う程の森の中。

広い敷地に、黒龍界会長、山崎龍造(72)の「城」があった。

政界との噂も絶えず、大きな権力を持つバケモノである。


その前に、鬼島が立っていた。


「山崎会長、あんたへの個人的な恨みはもう忘れちまった。今の俺には、あんたと争う気なんかねぇ。ただ・・・守るべきものを守りたいだけだ」

「ふっ・・・。鬼島よ、そんな弱気でこの関東を統一するなどと、よくぞほざいたものだな」

部屋には二人だけであった。


「鬼島、お前のオヤジを一番信用していたのは、恐らくこのわしだ」

「何?」

意外な言葉に動揺する鬼島。

「わしはこの力を手にいれるため、何でもやった。本当はお前のオヤジも一緒に、この大都市を手にするはずだったのだ」

「お前なんかと・・・」

「その通り。あいつは、わしを裏切りおった。それどころか・・・」

「うるせぇ。そんな昔話を聞きに来たんじゃねぇ❗️」

鬼島が話を折る。

「まぁ、慌てるな」

穏やかな老人の様につぶやく。

「わしは年老いた。今日お前を呼んだのは、お前との争いを終わりにするためじゃ」

大きなデスクの椅子に座り、一見、心を開いた様な語り。

サングラスの中の鬼島の目が、山崎の斜め後方に置かれた銀のオブジェを見る。

そこに映る山崎の右手には、黒光りする銃が握られていた。

(まったく・・・この芝居猿め)


「どうじゃ、お前も命は惜しかろう。抵抗はやめてワシの傘下につけ」

「ふざけるな❗️俺は命など惜しくはねぇ」

「鬼島、少し慎重に返答を選んだ方がよいぞ。ワシもせっかく忘れてもらった恨みを、上塗りしたくはないからな」

山崎の深いしわが、不敵な笑みを浮かべた。

「上塗り・・・?」

(・・・しまった⁉️)

「ヤ・マ・サ・キ❗️」

「ふぁっハッハ!もう遅いわ」

「クソっ❗️」

鬼島は、ドアの外へ飛び出した。