スタジオは騒然となった。

「メイ、落ち着いて」

「ラブ、一人にしてごめんね。一緒に帰ろ」

可愛い笑顔。

差し出したメイの手には、包帯が巻かれていた。

「どうしたの、その手?」

「何でもないよ。さぁ、早く」


ラブの秘密を知ったショックよりも、自分のせいで、ラブを窮地に追いやったことが、許せなかった。


「ラブ、言うこと聞いてやってくれ。これ以上、壁を壊されちゃかなわん」

T2が、メイを見に行った時、メイの拳は血だらけになっていたのである。


「メイ・・・」

ラブが、メイの手を取る。

「みなさん、今日はこれで失礼します。山本さん。逃げないでくれて、ありがとう」

一瞬笑顔を見せて、ラブは、スタジオを後にした。

表に停めた車では、ヴェロニカが待っていた。

「やっぱり、ラブのお世話は、メイじゃないとだめですわ。私は、少し後片づけをしてから戻ります」

「ありがとう。ヴェロニカ」

車に乗り込むラブとメイ。

その瞬間、メイが泣きながら抱きついてきた。

「ラブ、ごめんなさい。私のせいで・・・」

「メイ、今日はあなたに助けられたのよ。ありがと」

強く抱きしめた。

「ラブ・・・。キスしていい?」
「うん、いいよ。でも・・・歯、磨いた?」

(・・・💧)

「また・・・今度にするわ」

そう言ったメイの唇に、ラブがキスした時、アイの通信が入った。


(ラブ、帝都病院の犠牲者が発表されました)

(やはり・・・)

(はい、残念です。)

ラブの脳裏に、カフェで赤くなった大山のいかつい顔が思い浮かんだ。

(それから、問題発生です)

(今は、勘弁して・・・)

(そうもいきません)

(犠牲者、生存者のリストに、マイク・レイズの名前がありません)

(どういうこと?)

(これを)

車内モニターに映像が映し出される。
山本が中継しているその背後。

アイが画像を止め、ズームアップする。

「これは⁉️」

「間違いありません。マイクです」

再起不能のはずの巨人が、そこにいた。

「アイ、鷲崎さんとベル(ベルベット・スタンリー:アースの長官)にこの画像を送って」


少しずつ、ラブの狙いと不安が、現実に変わりつつあった・・・。