一番手の神尾が闘技場に上がり、試合の合図が鳴った。

アメリカ一番手は、アグル・ライアン。身長160センチと小柄であるが、残忍な柔術の達人である。

合図と共に、アグルが激しく蹴りを放つ。

(早い・・・)

神尾が腕でブロックする。

そのブロックを連続してアグルの足が襲う。

まるでサンドバック状態であった。

神尾の腕がしびれてくる。

何とか前へ出たい神尾だが、アグルの猛ラッシュのスピードに阻まれていた。

「神尾!止まるな、回れ」

大山が叫ぶ。

(おかしい・・・T2のデータに蹴りなんてない。)

その時、右中段蹴りを放ったアグルのリズムが、一瞬狂った。

そのスキを神尾は見逃さない。

左腕でガードし、その腕でアグルの足を流す様にして、左足を半歩出す。

それとほぼ同時に、半身オープンになったアグルの左脇腹をめがけ、高速の右中段蹴りを放つ神尾。

「ダメーっ⁉️」

神尾がラブの声を認識した時には、その右足は空を切り、真下にアグルが滑り込んでいた。

罠であった。

繰り返される蹴りに、神尾は、敵が柔術師であることを忘れてしまったのである。

(し・ま・った❗️)

アグルの太い腕が、神尾の左足に絡みつく。

足をすくわれた形で、バランスを失った神尾が前のめりに倒れる。

アグルは、そのまま左足首をキメ・・・一気に捻り・・・折った。

「グキャ!」

「ぅあああああーっ❗️」

神尾の叫び声が響く。

「神尾❗️」

大山が立ち上がり、さらに右足をキメにかかるアグルを見て、棄権の合図を出した。

ゆっくり立ち上がったアグル。

ラブは、その顔に、獲物をたいらげた、獣の笑みを見た。

(こいつら・・・、やっぱりマスコットってわけには、いかないようね・・・)