スプリング・フェスティバルのカフェでの話し。

アイとコンタクトしている間に、大山の勘違いとは言え、ラブはこのエントリーを受けたことになったのであった。

ラブが、後日、大山のメールに気付いた時は、すでに遅かった。

それでも、一旦は断るつもりで、大山のもとを訪ねた。

その時、大山は真剣な眼差しで語ったのである。





「5年前、私はアメリカの道場で、子供達に空手を教えている兄を訪ねました」

道場を始めることを考えていた大山は、兄に協力を求めたのである。

しかし彼の兄は、アメリカの子供達を見放すことはできない、と断ったのであった。

「その夜、私は兄とバーで飲んでいました。トイレに行っている時、店の中で、大きな音がしたので、急いで戻ってみると、兄が酷くやられて倒れていました」

悔しさに震える拳をラブは見ていた。

「客に嫌がらせをされている女店員を助けようとした兄は、その男にやられてしまったのです。男に挑みかかろうとする私を、兄は、最後の力で引き止めたんです。「武道家が、戦うのは、闘技場の上だけだ。」と言って・・・。兄は一度も、手を出さなかったということでした」

武道家が涙を流していた。

「兄は、その後すぐに死にました。 殺したのは、マイク・レイズ。私のようなものが、奴と戦える機会なんてあるはずはなく、諦めていました」

「そこに、連盟の話が来たってわけね」

「そうです。ラブさん、お願いします。恐らくもう二度とこんなチャンスはありません。どうしても、私は奴と戦わないといけないんです」

「大山さん。分かりました。ここには、あなたと、神尾さん以外に、出れる人はいないもんね。なんちゃって師範代の私なんかで良ければ、力になるわ」

「ありがとうございます!絶対に、私と神尾で、仕留めます。ラブさんは、座って見ていてください」

大山が、嬉しさのあまり、ラブの小さな手を両手で握り締める。

自信満々の大山ではあったが、ラブは、敵の強さを知っていた。

「痛いって、痛い!」

「うわぁ💦」」

我に返った大山が、真っ赤になって慌てて手を放す。

「んじゃ、マスコットガールってことで」

ラブは、ウィンクした。