『それからね、これがとっておきなの。』

(・・・!!)

目の前に置かれた写真に、私は釘付けになりました。

(そんなことって・・・まさか・・・)

ゆっくり、私の遠い記憶がよみがえってきました。


『この子達はね、小さい時に神社で拾ったの。本当はもう一匹いたんだけどね、お母さんと行った時には、2匹しかいなくて。』

まぎれもない、私の妹たちでした。

『お母さんと二人で、一生懸命に何日も探したんだよ。でも見つけられなくて・・・。どこかで生きていてくれたらいいけど・・・。』

(ここに、いるよ・・・。ヒトミ。)

何だか胸の辺りがキュンとしていました。

『ヒメとリコって言うの。ヒメはね、拾ってからすぐに、別の家にもらわれて行ったんだ。リコはずっと、私の友達で、一緒に暮らしてたんだけど・・・』

ふと見ると、彼女の目からは、涙がこぼれ始めていました。

『リコはね、車に轢かれてしんでしまったの・・・。私がちゃんとドアを閉めなかったから。私の後を追いかけて出てきて・・・。私のせいなの・・・許してねリコ。』

(ヒトミのせいじゃないよ。泣かないで。妹たちは、ちゃんと幸せに生きていたんだ。ヒトミのおかげで・・・。良かった・・・。)

私はずっと気がかりであった妹たちのことが分かり、心の奥にあった悲しみが、一つ消えるのを感じました。

と、同時に・・・

(まさか・・・もしかして?)

ふと見ると、別の写真に、背中に箱を付けた女の子が写っていました。

(この子は!!)

その写真を見つめる私に気付いたヒトミ。

『そんなに見ないでよ。恥ずかしいから、それがちっちゃい時の私よ。』

涙を流しながら、彼女が照れ笑いをしました。

そうして、小さな袋を開いたのです。

「リンリン♪」

その音を忘れるはずがありません。

『この鈴はね、小学校に入学した時に、お父さんがランドセルに付けてくれたの。この鈴を鳴らすとね、いつもネコちゃんたちが、走ってきたんだよ。一度、壊れたんだけど、彼が直してくれたの。懐かしいわ・・・』

(ヒトミは、あの時の女の子なんだ。大好きだったあの女の子なんだ。)

『わっ!どうしたのカズ!』

思わず私は、ヒトミの胸に飛びついたのでした。

(ありがとう、ヒトミ。私たちを助けてくれてありがとう。)

私のヒゲを、涙が伝っていました。

『変なカズ。なんであなたが泣くのよ・・・。センチってるのは私なんだからね。』

ヒトミの頬にも、涙が次から次へと流れていました。