オフィスラブは突然に〜鬼部長は溺愛中〜

 悩みに悩んで、ひとまず楓に連絡を入れることにした。

 リビングのソファーに寝ている部長を横目に、ダイニングにあるキッチンに入らせていただく。そして、端っこにしゃがみ込んで、楓に発信した。

 数コールが長く感じる。

「楓!」

「柚、体調はどうだ?」

「えっ?」

「昨日倒れたんだろ?」

「何で知ってるの?」

「何でって、椎名さんが連絡くれたからだろ」

「…」

「おい、柚?」

「はい…」

「何でそんな不貞腐れた声なんだ?」

「全く状況が…え?」と話をしている途中に柚の手の中のスマホが後ろから取られた。

「もしもし。椎名です」

 何故か椎名部長が楓と話し出す。柚は状況についていけず、ただ呆然と椎名部長を見上げて見つめる。その間にも話はどんどん進んでいるようだ。

「はい。大丈夫です。午前中のうちに必ず病院に連れて行きますから」

「ええ、はい」

「じゃあ、もう一日お預かりします。はい。では」

 楓の声は聞こえないが、話は済んだようだ。柚の手の中にスマホが戻って来た。