オフィスラブは突然に〜鬼部長は溺愛中〜

 着替えて戻って来るとテーブルには、鍋がセットしてある。

「今日は鍋?」

「せっかく一緒に食べれるし、お野菜をたくさん食べれると思って」

「久しぶりで嬉しい」

「よかった〜」

 鍋は既に温められていて蓋を開けた瞬間、食欲のそそる香りが漂う。

「いただきます」

「どうぞ」

 響は一口食べ「ウマイ」と幸せな顔でパクパクと食べ進める。鬼部長は全くいない。

「それで、昼間の話なんだが…」

「心当たりがなくて。別れろって事は、響さんの事を好きな人?」

「俺にも全く心当たりがないんだ」

「誰なんでしょう…」

「柚の家を知られている事が問題だ」

「うちには楓もいるし、いざと言うときは楓に…」

「楓くんがいない日もあるだろう?」

「…」

「とにかく、今日は俺が柚を送っていくから、様子をみよう。もしかしたら、いつもと違う状況に、何か変化があるかもしれないしな」

「うん」

 そしてこの日は、響が柚をマンションまで送り届けた。いつも感じる視線は、マンションを出た時に感じた気がしたが、その後は全く感じなかった。